既製品を買っているうちはなかなか意識することはないかもしれませんが、オーダースーツをつくるようになると直面するのが、裏地問題。
主にキュプラという天然素材と、ポリエステルというお馴染みの化学繊維の2つが選択肢としてあがってきます。
基本的にキュプラが高級素材とされ、有料オプションになっているだけに、当然キュプラの方が良いわけですが、悩ましいのは、「追加料金を払ってまでキュプラにすべきか」という問題。どんなスーツでもキュプラにすべきなのか、ポリエステルで十分なのか、あるいはキュプラにすべき基準めいたものがあるのか。今回はそんな疑問に対して、一つの考え方をお示ししていきます。
キュプラの利点
そもそもキュプラとは、天然素材をもとにつくられた繊維です。ポリエステルに比べ、「静電気が起こりにくい」、「光沢がある」などとも言われますが、何よりキュプラとしてのメリットは、「吸放湿性」と「着心地」です。
天然素材であるだけに、吸放湿性に優れていて、夏は蒸れを防ぐ一方で、冬は吸湿性が働いて発熱してくれるため暖かみを感じられるというメリットがあります。そのような機能面に加え、柔らかく、なめらかな素材であるため、やはりポリエステルと比べると着心地はキュプラの方がだいぶ良くなります。
なかなか人には見られない裏地の部分ではあっても、このように「快適性」の点に大きく作用する要素になるため、有料オプションの中でも比較的優先度が高いといわれています。
最初はポリ裏地で十分
ですが、ある程度スーツのオーダーに慣れてくるまでは、私は無料のポリエステル裏地で十分だと考えています。
というのも、着心地、あるいは暖かさや涼しさというものは、裏地よりも、表地=スーツ自体の生地による影響の方が大きいということが前提としてあります。いくら高品質なキュプラ裏地を選んでも、スーツの生地が厚手のフランネル素材であれば、春夏にはとても着られたものではないでしょう。
涼しさや暖かさ、そして着心地は、基本的にはスーツ自体の生地ありきで決まってくるもので、裏地が作用する割合で考えると、そこまで大きくないのです。
実際、裏地がキュプラでもポリエステルでも、そこまでの違いは感じないという人だって少なからずいるくらいです。なんとなく「キュプラは必須」という風潮はありますが、ポリエステルかキュプラで、そこまで劇的な違いがあるわけではないということは、オーダーしてみる前に把握しておくべきでしょう。既成品のお店で、両者を着比べてみても良いかもしれません。
まして、裏地は基本的には他人の目には入りづらい部分で、外からの見た目にはほとんど影響がありません。何度かオーダーをしてみて、オーダースーツがどのようなものか、あるいは自分の好みがどこにあるのか、といったことがわかってくるまでは、有料オプションは最低限に絞っておくべきというのが私の考えです。
※参考記事
はじめて作るときの「必要&不要」オプションを整理してみた【オーダースーツ】
慣れてきたらキュプラに!
とはいえ、ある程度オーダースーツに慣れてきたら、ぜひキュプラは推奨したいところです。
それは何より、良い生地で仕立てるようになってきたら、裏地もそれなりのものにしないと不釣り合いなところが出てきてしまうからです。せっかく良質な生地であれば、その着心地を損なわない裏地にすべきですし、また裏地が安っぽいものですと、表地と裏地のコントラストが大きくなり、見た目にも多少影響してくるでしょう。その意味では、やはりキュプラ裏地というのはオーダースーツにおいて優先度の高いオプションといえます。
ということで、「最初はポリエステルで十分だけど、やがてはキュプラ必須に」というのが私の裏地素材に対する考えです。
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