30代にもなり、そろそろ少し良さげなスーツにも手を出したいけど、どういう選び方をしたらいいのか……というお悩みをお抱えの方へ。特定のお店をひいきすることなく、選び方のツボとなる情報をお伝えしたいと思います。
30代は安さより「コスパの良い」スーツを
20代の頃に比べ、多少懐に余裕が出始めてきたものの、かといってあまりに高いスーツに手を出すほどのガチ勢でもないというのが、多くの30代のリアルではないでしょうか。
つまり、20代の「安さ重視」から、「コスパ重視」に切り替わった年代といえるでしょう。
そうなると、目立たない部分のディティールを重視する必要はありませんし、着心地を向上させる仕立てにお金を出すなら、その分良い生地のためにお金を使う方が、理にかなっているのではないかと思われます。
実際、スーツというものは、良い意味でも悪い意味でも、「無駄な仕様」に溢れています(ここがスーツの醍醐味でもあるのですが……)。だからこそ、こだわりはじめるとどんどん金額が増えていく世界になっているわけですね。
でも、洋服の業界で働いている方や、よほど金銭的余裕のある方でない限り、そんな“沼”にハマる必要はありません。
30代こそ、コスパを最大化させるという視点で選んでいくと良いのではないでしょうか。
ブランドものより「ノーブランドのオーダー」
ここで気になるのは、いわゆるブランド品のスーツはどうなのか、という点ではないでしょうか。
ポールスミスやタケオキクチなどのファッションブランドが、“ブランドとして”つくっているスーツですね。
高いものだと、アルマーニやバーバリーなどがイメージされるところでしょうか。
ブランドスーツのコスパは悪い
ただ、コスパの面で見るなら、これらのブランド品を選ぶことは、オススメできません。
というのも、スーツにおいては、ブランド品を選ぶメリットがあまりないからです。
まず、大きいのは、「ブランド代」として高くなっている部分が大きいのに、スーツだとブランドであることがわからない点です。
単純化してお話しすると、例えばポールスミスのカジュアルな服を着ていたら、ロゴや、その独特な色使いで、すぐに「ポールスミスの服だ」とわかることでしょう。多くの人は、それを目的に買うからこそ、「ブランド代」として少し高くなっていたとしても、甘んじて受け入れているわけです。
ですが、これがスーツになると、その仕様上、ぱっと見でわかる部分に、ロゴや、そのブランドを象徴する特徴が出せないのです。せっかくブランド代がかかっているのに、そのメリットをあまり享受できないということです。
もちろん、そのブランドのスーツだからこその型紙など、何かしらの特徴はあるとされています。でも正直、普通の人がその形を見て、「あ、ポールスミスのスーツだ!」なんてわかりません。
しいて言うなら、ポールスミスは裏地にものすごく特徴があるので、それが見えればわかる人もいるかもしれませんが、ふつうに着ていたら裏地は「チラ見」が発生するかどうかでしかありませんし、まして他のブランドなら、ふつうの人がブランドを判別する要素は限りなくゼロに近いのです。
実際、この記事をお読みいただいている皆様の中も、他人のスーツを見て「いいスーツだな」「かっこいい色(柄)だな」と思うことはあっても、「このブランドかな」と思うことなんて、ほとんどないのではないでしょうか。
ノーブランドのオーダースーツ
まして、スーツのかっこよさのほとんどは、その生地のクオリティと、サイズ感によるとされています。
とすれば、わざわざブランド品から買う必要性というのは、よほどそのブランドにこだわりでもない限り、ほとんどないのではないでしょうか。
それならばむしろ、ブランドものでなくとも、オーダースーツという選択肢をとる方が理にかなっているといえるでしょう。
極端にお話しすると、同じ生地なら、ブランド品の既成品と、ノーブランドのオーダースーツ(今回は、ユニバーサルランゲージやグローバルスタイル、SADAなどのオーダースーツ店を「ノーブランド」とくくらせていただきます)は同じくらいの料金感で買えるでしょうし、むしろオーダーの方が安く済むくらいに思われます。
何よりオーダーなら、基本的には体型に合ったサイズ感でスーツが仕立てられるわけですから、少なくとも既製品よりは適したサイズ感のスーツになると言って良いでしょう。
そう考えると、「見えないブランド」にお金をかけるよりは、そこにはこだわらず、オーダースーツに挑戦してみる方が、良い選択になるのではないかと思うのです。
オーダーは「生地のコスパ」を見る
ブランドに余計なお金を払う必要はないというお話をしましたが、生地のブランドにはぜひこだわっていただきたいと考えています。
これはさきほどのブランドとは違い、ゼニア(厳密にいうと、ゼニアはスーツブランドも展開していますが)やロロピアーナ、カノニコ、レダなどの生地メーカーのことですね。
これは生地のクオリティに直接的に関わるものですから、こだわる価値のある要素だといえます。
良い生地で、かつサイズ感が合っていれば、スーツとしては最高にかっこいいものができるはずです。
その意味で、やはりコスパの良いオーダースーツ店で仕立てるのが良いとは思いますが、AOKIやスーツカンパニーなどで売られている既製品だとしても、サイズ感さえ合っているのなら、それでももちろん良いのではないかと思います。
仕立てのクオリティ
一方、オーダースーツとなると、よく「仕立ての良さ」が話題にあがります。
実際、仕立ての部分のクオリティで、オーダースーツ店の料金はけっこう変わってきます。
ただ、スーツの見栄えで見るなら、やはり大きいのは「生地」と「サイズ感」で、仕立てのクオリティが及ぼす影響は、比較的小さいといえます。
これは決して仕立てのクオリティを軽視しているわけではなく、むしろ私自身はある程度仕立てにもこだわりたいタイプです。着心地もそれなりに変わってきます。
ですが、「コスパ」の面で見るなら、お金をかけるべきはここではないだろうという考え方ということです。もちろん、各々の希望次第では、仕立てにもぜひこだわっていただければと思うのですが、あくまでもコスパ論という趣旨で申し上げるなら、仕立て代は安いところで、より良い生地を選ぶ方が良いのではないかと思うわけです。
芯地には注意を
最後に触れておきたいのは、芯地です。
芯地自体についてはこちらの記事(結局「芯地」って何?初心者は何を選ぶべき?【オーダースーツ】)もご参照いただけたらと思いますが、簡単に言うと、表地と裏地をつなぐ素材のことで、低価格スーツによく使われる「接着芯」だと、スーツの堅牢さや立体感は比較的小さく、高級スーツに使われる「毛芯」の場合はより頑丈で、立体感のあるスーツになるという話です。
正直、そこまで「格段に」というわけではないものの、「毛芯」のスーツの方が、基本的には見栄えが良いとされています。あるいは、生地が良いものになるほど、それに合わせて芯地がしっかりしていなければ、つり合いがとれず頓珍漢な印象を持たれてしまうリスクもあるといえるでしょう。
加えて、20代の頃のひたすら安いスーツ選びとは違い、ある程度良いものを選ぶようになると、「長く着たい」という気持ちも芽生えてくるはず。そう考えると、ある程度「芯地」にもこだわっていきたいという話になってくるのです。
オーダースーツの場合の芯地の考え方については、こちら(格安オーダースーツ店を比較 「有料オプション」と「芯地」に注意!)をご参照いただけたらと思いますが、なかなか表に出てこない要素ですから、ひとまずは、一つの視点として「芯地」という考え方をご認識いただけたらと思っています。
左が接着芯で右が半毛芯(ラペルは毛芯)。パッと見ではわからない…?
結論
ということで、結論を述べるなら、
・コスパの良いオーダースーツ店で、良い生地で仕立てるべき
・できれば芯地にも注目しよう
ということになるでしょうか。
皆さまのご参考になれば幸いです。
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