ネットでスーツのオーダーができることをうたい文句としている「Suit Ya」なるスーツ屋。
オーダースーツについて検索をすると、やたらと広告が表示されるようになるので、気になっている方も多いのではないでしょうか。
それで口コミや「つくってみた」系のサイトを見てみると、褒めたたえる記事ばかり・・・。
しかし、よっぽど良いスーツ店なのかと思い、HPで商品や価格などを見てみると、本当にお得なのか?と感じてしまったため、そんな率直な感想を綴っていきたいと思います。
「ネットで完結」はむしろデメリット
まず、「ネットで簡単オーダーメイド!」とうたっている点について。
そもそも、私のような庶民にとって、スーツをオーダーする機会なんて、そう頻繁にあることではありません。そして、それだけ数少ないオーダーの機会であるからこそ、購入するからには、毎回きちんと採寸したり、細かい体型補正や仕様などについて店員さんと細かく相談したりしたいものです。
それを、「ネットで完結してラクラク~」などということは、特段メリットと感じないどころか、むしろデメリットのように感じてしまうのです。
「自分でもちゃんと採寸できる仕組みがある」とはうたわれていますが、ふつうのオーダースーツの店舗におきかえれば、未経験で研修も受けたことのない店員さんが、マニュアル通りの採寸を行っている感じじゃないでしょうか。
「初回は1度だけ無料でお直しができる」といっても、部分的な微調整で済むのかという点は不安が残ってしまいますし、あるいは「どこをどう調整したらいいのかさえわからない」という人も出てくるのではないでしょうか。
ある程度数字が合っていれば、それなりに体型に合ったスーツができあがるとは思いますが、誰でもできる採寸しか反映されないスーツであれば、既製品に少し調整を加えたものとあまり変わりがないのではないように思えてしまいます。
そう考えると、ネットで完結するという点は、やはりメリットとは感じられないのです。ただ逆に言うと、店舗やスタッフにかかる費用がかからない分、商品の安さにつながっているのであれば、サイズの不安さえ払拭できれば、人によってはポジティブにとらえられることなのかなとは思いました。
コスパは微妙か?
しかし、選べる生地の金額などを眺めてみると、「そこまで安いとは言えないのでは?」というのが率直な印象です。
一応、種類はそれほど豊富というわけではないものの、ベーシックで使いやすそうな生地が並んでいます。
そして、「税込み29,800円~」と宣伝されているので、3万円弱でオーダースーツができるなら、「お、けっこう安いじゃん」と思えるのですが、この最低価格帯の生地は、なんとポリエステル100%! もはやイオンなどで売っているような激安スーツと同じ素材で、これはさすがに、見栄えも着心地も決して良いものとはいえないでしょう。
せめてウールが半分程度入っていれば、コスパの良い商品だという印象になりますが、さすがにポリエステル100%では、いくら3万円弱でオーダースーツができるとはいっても、お得感はありません。
本来、サイズぴったりでカッコよく見えるはずのオーダースーツなのに、肝心の生地に安っぽさがあからさまに出てしまっては、その意味もないでしょう。
作業服としてとにかく安くスーツがほしいというだけなら、イオンなどで1万円くらいで買えるような既製服を買う方が良いように思います。せっかくオーダーをするなら、せめてポリエステル感のあまりしない生地で仕立てるべきだと、私は思います。おそらく、「1着29,800円~」というキャッチコピーのために置いている商品なのかなと推測します。
ちなみに、この最低価格帯の商品の大部分も含め、どれも「35%オフ」「44%オフ」などとお得感を演出しているところに、若干のいやらしさを感じてしまいます・・・。
実際、29,800円の最低価格帯の商品も、「35%オフ」でその価格になっている生地がほとんどのようです(23年6月時点)。
と、ここまでコスパの悪さばかりを書いてきましたが、「これは!」という商品もありました。
インポートの高コスパ生地として、今やどのスーツ屋も導入しているカノニコやレダの生地は、「35%オフ」によって5万円台後半くらいの価格でオーダーできるようになっているので、これはさすがにお得だと言ってもいいのではないでしょうか。
カノニコ・レダなら、大手どころの「ユニバーサルランゲージ」や「グローバルスタイル」などでも、2着セット購入を前提として、だいたい1着あたり5万円~といった価格帯になるでしょうから、1着だけでこの価格で買えるとなると、かなり安いといえると思います。
また、カノニコ・レダ以外でも、ロロピアーナやドラゴ、ピアチェンツァなどのインポートものは、上記と同様にかなり安いようなので、Suit Yaで買うなら、最低価格帯のものよりも、このようなインポートの定番ブランドでしょう。 ある程度オーダー慣れしている方の中で、気に入った生地を見つけられたら、このあたり注文してみるのは、正直アリかなと思いました。
「追加費用なし」の謎
公式の案内によれば、「通常であればオプションとして追加料金がかかる仕様を『標準仕様』によって、無料でご提供しております」とありますが、正直これは真に受けてしまっていいのかという点は、ちょっと疑問です。
たしかに、オプションとして必要度が比較的高い「本切羽」が標準で入っているのは、非常に良いと思います。
ただ、この標準仕様に、「AMFステッチ」や「水牛ボタン」などは含まれていません。さらに、「キュプラ裏地」については無料・有料問わずそもそもの選択肢として用意されていないから驚きました。
こうなると、「追加費用なし」といって、まるであらゆるオプションが無料でついてくるような印象を持ってしまうと、ちょっと肩透かしを食らうかもしれません。
まあ、上記のようなカノニコ・レダあたりのラインなら、インポートものの中では「最上位」というものではありませんから、裏地の質感がポリエステルでも特に気にならないという方なら、裏地問題は気にするほどのことではないかもしれません。ただ、AMFステッチ(2500円)や水牛ボタン(+2000円)は、見た目に影響してくるので、できれば入れたいなというところでしょうか。
なお水牛ボタンを入れるかどうかの基準については、こちらの記事も参考にしてみてください。
プラスチック、本水牛、水牛“風”のボタン 見分けがつきますか?
ということで、SuitYaに対して違和感を抱いた点と、「買うならここでは」という点について、率直な思いをお伝えしてきました。皆様のご参考になれば幸いです。
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