スーツの裏地、冬に背抜きは寒い?夏に総裏は暑い?ダサい付け方とは…

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オーダースーツを仕立てる際に迷いが生じる一つが、裏地を「背抜き」にするか、「総裏」にするかという点でしょう。

一般的には、総裏の方が暖かく、背抜きの方が涼しいなんて言われるものですね。

暑がりで汗っかきの私は、最初は背抜きばかりだったのですが、今はどのスーツも総裏で仕立てています

今回は、そんな私の考え方の変化から、背抜きと総裏の判断基準についてお伝えしていきます。

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背抜き・総裏とは

ジャケットの裏地の貼り方には2種類あります。

いわゆる総裏とは、ジャケットの裏側全体にかけて裏地が張り付けられていて、背抜きは、その名の通り背中の部分の裏地が抜かれている仕様です。

少し見づらいですが・・・

↓これが総裏で

 

↓これが背抜き

 

見比べてみると、2枚目の方は、ツヤツヤした裏地が、一部にしか使われていないことがおわかりいただけるだろうと思います。

そしてご覧の通り、背中の裏地がある分総裏の方が暖かく、背中の裏地がない分背抜きの方が涼しいというのが一般的なとらえ方といえるでしょう。

背抜きのメリット・デメリット

そうした中で、もともと“背抜き信者”だったところから“総裏信者”へと変わった理由も踏まえながら、総裏のメリットについて述べていきます。

そもそも私がオーダースーツを最初につくったときは、2着とも背抜きにしていました(詳細は「ユニバーサルランゲージではじめてパターンオーダースーツをつくってみた」に)。暑がりで汗っかきだったため、できるだけ涼しく着られるようにしたいという思いから、深く考えることもなく、問答無用で背抜きを選んでいました。一般的にも、裏地がない分通気性が向上し、背抜きの方が涼しく着られるとされていますよね。

 

そんな私が総裏にこだわるようになった理由は、ジャケットを長持ちさせるために他なりません。

私の経験として、背抜きのジャケットで、それこそ裏地が抜かれている部分の生地がすり減ってしまい、もう使えなくなってしまったことがありました。下取りに出してしまったので現物は残っていないのですが、背中の部分の生地がすり減り、部分的に薄くなって透けて見えるような状態になってしまいました。

カノニコのスーパー110のスーツで、使用期間は3、4年ほどだったと思いますが、当時「スーツを休ませる」という考えを持ち合わせていなかった私は、連日着用することも多く、その分傷みも激しかったのかなと思います。

とはいえ、一般的にスーツはパンツの方が早くダメになると言われているのですが、これについてはジャケットが先にダメになってしまったのがけっこうショックでした…。でもこのときは「総裏」「背抜き」という概念を知らず、「そういうものか」と思っていたんですね。

総裏のメリット・デメリット

今この経験を思い出すと、やはり丈夫さをもたせるためには、総裏の方が良いのではないかと思うのです。

まず、背中が表地にダイレクトに触れるより、裏地が一枚入っている方が摩耗が少ないというのは、イメージできるところですよね。

また、裏地がないとすり減りやすいというだけでなく、汗がそのまま生地に浸透してしまうのも、傷みやすい理由といえるかもしれません。私のように“暑がりだから”という理由で背抜きを選んだのに、“暑がりだからこそ”傷みやすくなってしまうというのは、本末転倒というか、なかなか考えどころですね……。

そう考えていくと、私個人としては、基本的には「総裏にする方が良い」というか、「背抜きを選ぶ理由がない」という結論に至りました。たしかに、生地が一枚余計に入る分、通気性が落ち(逆に言うと保温性が増し)、涼しさには劣るという考え方もあるかもしれないものの、特に春・夏で着るような薄い生地の場合こそ、擦れてしまうことが心配なんですね。

例えば1着あたり2~3万円くらいで作れるレベルのものなら、ワシワシ使うスーツと割り切って、背抜きにするのもありかもしれませんが、基本的には長く着たいものばかりなので、「総裏」にしています。

「冬に背抜きは寒い」「夏に総裏は暑い」は本当か

それにしても、よく「背抜きの方が涼しいから、背抜きが春夏用、総裏が秋冬用」と言われたりもしますが、本当にそうなのでしょうか。

たしかに、“たかが裏地”とはいっても、一枚分生地があるかないかでは、通気性は変わってきそうです。

上記の通り、私もそんなイメージを持っていたので、オーダースーツに手を出して間もない頃は、暑がりで汗をかきやすいこともあり、どれも背抜きでつくっていました。

そして手持ちの既成スーツを見直してみても、ほとんどが背抜きの商品だったので、総裏のスーツはほとんど経験がない状態でした。

「総裏でも通気性は変わらない」説

しかし、「総裏でも通気性はほとんど変わらない」という複数の情報に触れてから、試しに総裏でつくってみたところ、たしかに通気性や暖かさ・涼しさというのはそう変わらないと感じたのです。

それはとあるお店でオーダースーツをつくろうとしたときのこと。例によって背抜きを選ぼうとしたときに、試しに総裏と背抜きで暑さ・涼しさは変わるのか尋ねてみたところ、その店員さんは「実際は違いはないと思います」と言ったのです。特に、ポリエステルではなく天然素材のキュプラになると、通気性も向上し、より一層違いはないはずとのこと(参考記事:キュプラとポリエステル 裏地を選ぶ基準)。

さらに、実際にネット上で発信されている様々な記事や動画を比べたとき、「背抜きの方が涼しい」という内容はあっても、その根拠となる情報はなかなか見つかりませんでした。

ということで自分自身がはじめて「総裏」で仕立てて着てみた結果、大した違いが感じられなかったので、「じゃあ背抜きにこだわる必要はないな」という結論に至ったわけです。

ちなみにこのときも2着オーダーしていて、片方をキュプラ、片方をポリエステルにしています。たしかに、ポリエステルの方は感覚的に少し通気性が劣るのかなという気がしないでもないですが、正直、優位に差があるのかはわからない程度でした。ましてキュプラの方は、さらっとした着心地で、むしろしっかり裏地があった方が涼しい?くらいに感じたときもあります。何より、汗をかいても、生地に直接触れないという安心感が、私にとってはとても大きかったです。

 

これは私の主観による部分も大きいかもしれません。しかし、実際に「総裏でも通気性や暑さは変わらない」と発信されている方も多いので、単なる私個人の感想という域は超えているのではないかと思っています。

ですから、「総裏だと暖かいから冬用」「背抜きは涼しいから夏用」という通説は、大した意味のあるものではないと思うのです。少なくとも、私の体感的には、両者で暖かさ、涼しさは特に変わりません。

キュプラの裏地

結論

ということで、体感温度にそれほど違いがないのであれば、よりジャケットを長持ちさせられる総裏にする方が良いだろうというのが、私の考えです。

ですが本稿で一番言いたいのは、「総裏の方がいいよ!」ということではなく、春夏用=背抜き、秋冬用=総裏という通説を盲目的に絶対の基準とするのではなく、まずは両者を着てみて、どちらがいいかを判断するというのも一つ手のではないかということです。個々人の状況、使い方に応じて判断していただけたらと思います。

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