オーダースーツの入門店としてよく挙げられるユニバーサルランゲージと麻布テーラー。
今回は、この大手2店を比較してみました。
生地の「選び方」と「種類」の比較
まずは生地選びの比較からです。オーダースーツ店において最も重要な要素の一つといえるでしょう。
ユニバーサルランゲージの場合
ユニバーサルランゲージの場合、このような50cm四方くらいの切り抜きストックから選ぶことになります。
グローバルスタイルやSADAなどのような「一着分まるごと」が置いてあるわけではありません。
なおバンチブックも置いてあるにはあるのですが、こちらは少し割高になってしまうので、実質的には選択肢に入ってきません(安さが売りの同店でオーダーするメリットがない)。
正直、生地の種類はそこまで豊富にはありません。青山商事の大手資本を活用し、ある程度厳選した生地を、大量に買い付けて販売している形になります。安く展開するためとはいえ、この少なさはけっこう痛い……。「ブラウンの中から色々選びたい」「チェックの模様や色から選びたい」という希望は、ほとんどかなわないと思った方がいいでしょう。その中からせいぜい1、2種類ずつくらいしか選択肢はないことが多いです。まだ生地の細かいところまではこだわりがなく、「良いのがあったら」というざっくりしたイメージくらいであったら、問題にならないかと思います(私もそういうときはユニバーサルランゲージでオーダーしています)。
麻布テーラーの場合
一方、麻布テーラーの場合は、基本的にすべてバンチブックから選ぶ形になります。ユニバーサルランゲージよりは小さいので、出来上がりをイメージするのが少し難しくなりますね。
ただし、生地の種類はかなり豊富。例えば、私がネイビーのブレザーをつくりたいと思って訪問した際は、「紺ブレ」だけでバンチブック一冊分が埋まっているほど。似たような生地でも、微妙な色や風合いの違いから選べるので、オーダースーツの醍醐味が楽しめるかと思います。
価格の比較
価格面で比べると、ユニバーサルランゲージの方に分がありそうです。
生地の価格
例えば、最安ラインで比べると、1着のオーダーであれば両者に大差はないものの、ユニバーサルランゲージは「2着5万円」というセットがあるのが強いです。だいた、ウール50%、ポリエステル50%という生地が多いのですが、しっかりウール見えするシンプルな生地も意外に揃っていますから、オーダースーツの入門店としてはぴったりではないかと思います。ただ、この最安ラインの生地の種類はかなり少ないです。まあ、「2着5万円」と謳うためのものでしょうから、仕方ないところでしょうか。
麻布テーラーの場合、1着4万4000円が最低価格になります。
オーダースーツの中では安い方だと思いますが、ユニバーサルランゲージの2着セットに比べると割高感はありますかね。なおユニバーサルランゲージの1着の最低価格も、麻布テーラーよりは少し安いです。
ただ重要なのは、麻布テーラーの場合は最低価格帯でも、ウール100%の生地があるということです。低価格の商品でも、良いものを提供しようという心意気を感じます。ウール100%の生地を4万円台でオーダーできるなら、お得感はあると思います。
ちなみに、麻布テーラーは基本的にセールを行っていないのですが、ユニバーサルランゲージは年がら年中やっているので(笑)、この点も後者のメリットかもしれません。特に、年末が近づくと始まる「アニバーサリーセール」はけっこう破格です。近年の資材高騰によって値上がりはしているものの、2年ほど前のこのセールで私は、10万円でデルフィノとカノニコの2着を仕立てることができました。既製品だとしても安いくらいかもしれません……。
参考記事:
デルフィノの紺無地スーツをオーダーした感想と反省点【ユニバーサルランゲージ】
なお先ほど少し触れましたが、ユニバーサルランゲージの最近の値上がり具合はけっこう激しいところがあります。例えばカノニコの生地の場合、ハンドメイドライン(後述します)では10万円超えは当たり前。マシンメイドでも、6、7万円程度はしてしまいますから、ここ2年ほどの値上がり幅は大きいなとしみじみ感じます。それでも業界の中では全然安い方ではあるんですけどね。
オプションの価格
続いて、水牛ボタンやAMFステッチ、チェンジポケットなどのオプションについてです。
麻布テーラーから先に述べると、オプションには全て追加料金が発生し、さらに一つひとつがけっこう高いのがけっこう痛いです。
主要なものを挙げてみると、水牛ボタン3850円(メタルボタンも同料金)、本切羽3300円、キュプラ裏地2750円、台場仕立て3300円、AMFステッチ2200円……と、必要度の高いオプションでありながらも、3つくらい追加しただけで平気で1万円くらいは追加になってきます。
生地代がお得な分、ここで稼いでいるということでしょうか。
その点、ユニバーサルランゲージの場合は、最低価格帯の商品でも、本切羽、AMFステッチ、台場仕立て、チェンジポケットなどは無料搭載。
さらにインポートものの生地などになってくると、水牛ボタンやキュプラ裏地なども無料搭載となってきますから、このお得感はかなり大きいです。
こうして生地とオプションを総合的に見ていくと、やはり価格面ではユニバーサルランゲージの方が優れている印象です。
なお初心者がつけるべきオプション、つける必要のないオプションは、こちらにまとめています。
はじめてのオーダースーツ「必要&不要」オプションを整理してみた
仕立てのクオリティの比較
オーダースーツに置いて、仕立てのクオリティも非常に重要な要素。というか、オーダースーツ店の価格差は、この仕立てのレベルによって差が生じていると言っても過言ではありません。
ということで、まずは2店の着心地で比べてみると、両者のジャケットを着用してみた限り、
ユニバーサルランゲージのハンドメイド>麻布テーラー>ユニバーサルランゲージのマシンメイド
という順になりました(左の方が優れている)。
なお「マシンメイド」とは、その名の通り機械による工程がほとんどで、その分、一般的に仕立てのクオリティは低い作り方とされています。
一方ハンドメイドとは、その名の通り、手作業による工程が多いため、きめ細やかな作られ方となり、一般的にクオリティの高い仕立てとされています。実際、首周りのなだらかなカーブや、肩回りや袖付けのナチュラルなつくりは、素人目に見ても美しいと感じますし、何より着心地はマシンメイドよりだいぶ良いなと感じます。
なお、ユニバーサルランゲージはハンドメイドをフラグシップラインとしている一方で、麻布テーラーはそこまでプッシュしていないようですが、麻布テーラーにもハンドメイド的な扱いの仕立て法はあるようです。調べてみると、ユニバーサルランゲージのハンドメイドよりも少し割高。ですが、写真を見る限りかなり丁寧なつくりをしていることがうかがえますから、麻布テーラーで良い生地が見つかった場合、こちらでハンドメイドで仕立ててみるのも良いのではないでしょうか。
接客の比較
こればかりは私の主観によりますし、店舗にもよるという大前提はあるのですが、その限りにおいて申し上げるなら、「どっちもどっち」というのが正直なところです。
電話対応はどちらもかなり丁寧で、実際に店舗を訪問しても、非常に丁寧な店員さんも少なからずいらっしゃるのはたしかです。
ただ、両者の複数店舗を訪問した感覚としては、「あまり愛想が良くない人の方が多いな」というのが率直な感想です。意外にも店長クラスでもそういう人は散見されるので、ここは店舗を多く構える大手どころのデメリットといえるでしょうか。
結論
ということで、最後に両者の比較をまとめておきます。
・生地の種類は麻布テーラーの方が豊富。なおどちらも見られる生地のサイズは小さい。
・価格面では、オプションまで踏まえると、ユニバーサルランゲージの方が優位。ただしどちらもオーダースーツ店の中では比較的低価格であるのはたしか。
・仕立てレベルは、両者に大きな差があるとまでは感じないが、懐に余裕があれば、ハンドメイドを選びたい。
皆さまのご参考になれば幸いです。
※関連記事
麻布テーラーでオーダーしなかった理由 ~紺ブレザーを求めて~ (評判との比較)
コメント